城壁と5つの城門に護られた都城アンコール・トムの中央に、バイヨンと呼ばれる広大な伽藍を誇る寺院が中心寺院としてそびえ立っています。

バイヨンに関しては、まず中央塔および周辺の諸塔における巨大な尊顔(現存173面、復元総数は181面)の解明を第一の目的として調査を行ってきました。これらの四面塔に対する美術史班の調査は、バイヨンを彩る彫刻として細部の彫刻的な分類などの基礎データを集積し、彫刻的作風や宗教的背景など、従来の説にとらわれない自由な発想と、クメール美術における幅広い比較研究など、総合的な立場から考察に取り組んできました。

その後、主な調査対象となる彫刻作品は、ペディメント(破風)、リンテル(まぐさ石)、付柱、外壁の浮彫りなどへと移っています。

一方、内廻廊の浮彫りは、風化や侵食の被害を受け、場所によっては浮彫りが消失するなど、その保存対策が急務になっています。そこで保存修復にさきがけて、現状を正確に記録保存する目的のもとに、浮彫りを線画に描き起こす作業も継続しています。