歴史的な文化遺産の修復を、どこまで、どのような方法で行うかは、現在でも議論の多い問題です。現存するアンコール遺跡の多くは消失している部分や建造手法等などに多くの謎があり、修復活動を行うにあたって、古代の人々の建物設計に対する考え方を理解する必要があります。

我々はまず、測量調査やインベントリー調査などにより建物の状況を正確に記録し、その変化の過程を追跡します。そして、劣化の原因や傾向を学び取りますが、同時に建物がどのように設計されたのか、寸法計画や建築技法、構造的な特質などをも分析します。

近年の大きな成果の一つは、古代の人々が建物を設計するとき「ものさし」の研究が大きく前進したことです。こうした建築学的調査は修復対象の遺跡だけでなく、同年代に建てられた他の建造物、また他年代に建てられた建造物の調査も同時に行い、慎重に比較します。

一連の建築学的調査研究は、未だ謎の多いクメールの建築史の解読に貢献するだけでなく、修復活動を行うにあたって、復原像を考察する際などの大きな手がかりとなるのです。