熱帯性気候の地域に分布する遺跡などの石造建造物は、維持や管理を日常的に実施していないと、各種の生物が遺跡の石材や煉瓦およびその周辺に繁茂して、劣化を著しく促進することが知られています。

アンコールの遺跡群でも、榕樹(ガジマル)などの樹根による石目地の開き、地衣類の着生による石材表面の粉状劣化、らん藻類の着生による石材の黒変現象、イオウ酸化細菌による石材の層状剥離・粉状劣化、さらにコウモリの排泄物やシロアリの巣による石材の劣化や汚染などが問題となっています。

保存科学班は、劣化要因と認められる加害生物や劣化生成物を採集し、得られた試料から劣化の主因となっている生物を分離・同定し、加害生物についての生態学的な検討を加えて、その防除対策を考えると同時に、加害生物の生理的な性質に基づいた生育を阻害する方法について検討を行っています。

またシロアリの防除対策とあわせて、遺跡周辺に生息するコウモリ類を移住させる方策についても検討しています。