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本資料は今までのバイヨンシンポジウムで議題となった問題やリコメンデーション(提言)等を類型化し、テーマ別に問題の解決方法を出せるよう、分析整理したものです。これは、「バイヨン憲章」づくりへの基本的な考え方を示すと同時に、「バイヨン寺院全域の保存修復のためのマスタープラン」の別冊付録に記載予定の「バイヨン憲章(案)」の議論の資料でもあります。
 

「バイヨン憲章」の位置づけ
「バイヨン憲章」は、バイヨンシンポジウムを通して見出された、今後のバイヨン保存修復事業に関するJSAの基本姿勢であります。これは、「バイヨン寺院全域の保存修復のためのマスタープラン」の一部を構成します。本憲章は、ベニス憲章、オーセンティシティに関する奈良ドキュメントを継承するとともに、アンコール及びその後の世界の体験から学び、バイヨン、アンコール遺跡のみならず、アジア並びに世界の文化遺産のこれからの保存修復のための指針となることも同時に期待しています。

バイヨン寺院の保存修復問題

バイヨンの何を、どこまで、どのように、
       誰が修復し、保存活用すべきか


バイヨンシンポジウム(1996年以来継続中)

バイヨンの保存修復のための技術的諸問題は、アンコール遺跡全体に関わりを持っているため、アンコール遺跡の保存修復に関わる、すべての外国チームの参加を呼びかけて議論を重ねてきました。また、このシンポジウムは、世界の関連する先例に学び、アンコール遺跡の保存問題を世界的な視野から考えることも意図しています。他の重要な遺跡の保存修復に関して注目すべき成果をあげ、貴重な経験を持つ、国際的専門家の積極的参加がありました。

 

"The Master Plan for the Conservation & Restoration of the Bayon Complex"
「バイヨン寺院全域の保存修復のためのマスタープラン」
 
The Glory of Bayon (contribution) /バイヨン讃(寄稿)
The Present Situation of the Bayon temple and the Monuments /バイヨン寺院と遺跡を巡る現況
The Mechanism of Deterioration and Collapse of Bayon  /バイヨンの劣化・崩壊のメカニズム
The Purpose and Method for the Master Plan  /本マスタープランの目的と方法
Fundamental Principles for the Conservation & Restoration & Utilization of the Bayon
(Towards the Establishment of " The Bayon Charter")
バイヨンの保存修復と活用のための基本理念(バイヨン憲章の策定に向けて)
Restoration Plan of Bayon  /バイヨンの修復計画
Preservation and Utilization Plans of Bayon  /バイヨンの保存活用計画
 
(Appendix /付録)
1. The Bayon Charter (draft) / バイヨン憲章(案)
2. The Bayon Symposium /バイヨンシンポジウム
3. 3-Dimensional Data of Bayon /バイヨンの3Dデジタルモデル
4. Inventory of Bayon /バイヨンのインベントリー
5. Art History Survey Report of Bayon /バイヨンの美術史調査報告
6. Building Structural Survey Report of Bayon /バイヨンの建築構造調査報告
7. Archaeology Report of Bayon /バイヨンの考古学調査報告
8. Petrology Report of Bayon /バイヨンの岩石学調査報告
9. Conservation Science Report of Bayon /バイヨンの保存科学調査報告
10. Evaluation of the Restoration of Bayon Northern Library /バイヨン北経蔵修復工事の評価
11. Standard Specification of the Specific Restoration of Bayon(ex. Stone restoration,Platform Dismantling) /バイヨン修復各専門工事標準仕様(石材修復・基礎解体など)
12. Maintenance Activities of Bayon / バイヨンのメンテナンス活動
13. Historical City Planning Survey Report of Bayon and Angkor Thom
/バイヨン・アンコールトムの実測調査と都市計画

The Bayon Charter
バイヨン憲章

 
1) Characteristics of Bayon
2) Environmental Preservation
3) Restoration Techniques
4) The Significance of the International Collaboration for the Conservation and Restoration Activities of Angkor
5) Preservation and Utilization of the Angkor Monuments and Cambodiaユs Region, People & Nation
 
1)バイヨンの特質
2) 環境保全
3) 修復技術
4) 国際的協調の枠組によるアンコール遺跡保存修復活動の意義
5) アンコール遺跡の保存活用とカンボジアの地域−民族−国家
 

バイヨンシンポジウムを通して見出された事

第1回目のバイヨンシンポジウムの目的はバイヨン保存修復活動に携わるすべての専門家との情報交換を開始する事でありましたが、回を重ねる毎に、我々は如何にしてバイヨンと向き合うべきかを、非常に広範かつ有意義に検討することができたと思われます。本項では「バイヨン憲章」の策定へ向けて、バイヨンの保存修復と活用のための基本理念を導くべく、過去のバイヨンシンポジウムを通して見出された、今後のバイヨン保存修復事業に対する基本姿勢について分析しています。


1.バイヨンシンポジウムでの主要な報告・議論項目について
第1〜7回目のバイヨンシンポジウムシンポジウムでの主要な報告・議論項目は11の項に要約・分類することができました。「バイヨン寺院全域の保存修復のためのマスタープラン」の骨格の検討を始め、バイヨンの歴史や修復技術の研究だけでなく、バイヨンの存在意義、海外事例との比較研究を含め、多くの視点から「バイヨン」について議論がされました。


2.バイヨンシンポジウムでのリコメンデーション(提言)について
バイヨンシンポジウムでの各回のリコメンデーションはその回毎の主要な報告や議論を踏まえて、発表されます。ここでは過去7回の報告・議論の傾向を分析した上で、今まで見出されたリコメンデーションを要約し、分類しました。その結果7つの項に分けることができます。バイヨンに関連した多くの謎や課題の解明に努め、同時にこれらの研究成果を広く共有することと、将来を担うカンボジア人専門家の育成が強く望まれました。ここでは地域計画とのバランスも図ってゆくことも重要視されています。これらの事項は「バイヨン寺院全域の保存修復のためのマスタープラン」に反映されます。


3.バイヨンシンポジウムでの主要な報告・議論項目とリコメンデーションの結果からの考察
バイヨンシンポジウムでの主要な報告・議論項目、リコメンデーションを踏まえ、次のように考えます。

バイヨンの修復活動は、専門的な調査に基づく史的価値・特有性に根差しており、崩壊過程の正確な把握と、既存の部材や構法をはじめとするオリジナリティーの尊重を踏まえて進めるべきだと考えます。そのためには若い世代に対する専門的教育が欠かせず、同時に情報化社会における保存修復活動として、情報および知識の共有と相互理解を国際的枠組の中で推進させることが必要と考えます。

また、アンコール遺跡全体におけるバイヨンの持つ役割を勘案し、地域の自然および社会環境の保全を踏まえた利活用の提唱を心がけるべきです。保存修復行為を通じた遺跡に対する貢献活動により、地域社会の持続的発展が望まれます。

以上を踏まえ、バイヨン憲章の策定に向けた[バイヨンの保存修復と活用のための基本理念(案)]を示します。

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