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アンコール・ワットの最外周壁内にある北経蔵

アンコール・ワット全域は既にモルタルやコンクリートを使用した補修を受けていますが、JSAは伝統的構法と散乱状態で放置されていたオリジナルな部材を可能な限り修復し、原位置復帰の上、保存するという基本方針に基づき、新たに入手可能となった砂岩を使用し、既存修復部分と調節しながら北経蔵の保存修復に取り組んでいます。

■石材の劣化・破損が及ぼす影響

アンコール・ワット北経蔵では、多様な石材の劣化・破損状況が見られ、そのほとんどはアンコール・ワット伽藍全体に共通した問題です。建物各部の変位と石材そのものの強度不足は部材単位での破損へと連動し、さらにそれは建物の部分的な崩壊へと進行します。また、石材の表面から風化する劣化現象は、美術的に極めて貴重な価値を有する石材彫刻の損失へと確実に歩を進めています。JSAではこれらの原因を解明し適切な修復を施すために、多様な分野から学際的調査を進めています。

■散乱石材の原位置復帰のための部分解体と再構築

アンコール・ワット北経蔵の上部構造の定期的な変位計測の結果、 当遺構は突発的な変動の可能性はあるものの、長期的には安定状態にあることが確認されつつあります。しかしながら、建設当初より蓄積された変位もまた認められ、原位置を確定された上部欠落部材を組積する場合には、どのようにして構造物の安全性を十分なまでに高められるかが問題となります。現在JSAでは、同定部材を再構築するために最低限必要となる範囲を解体し、新たに調整層を設けることにより、相対的なオリジナルの位置関係で再組積する方法を試みています。

部分解体と再構築の範囲

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