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工事概要

プラサート・スープラは、ラテライトが主要建材として使用されている塔状構造物群です。全12基の中で倒壊の危険性が最も高いと判断されたN1塔およびN2塔前室がJSAの保存修復対象となりました。 修復前調査は、1994年の調査開始時よりテラス部の考古学的調査から始まり、各塔の現状調査も同時に実施されました。

保存修復工事は、2001年5月よりN2塔前室の部分解体に着手し、2003年9月に再構築が完了しています。その直後、N1塔の本格的な全解体・再構築手法による保存修復工事が開始され、2005年4月に工事が完了しました。 今回のN1塔の工事では、約2000材のラテライトブロック、700材ほどの砂岩ブロックが解体されています。そのうち756材のラテライトブロック、273材の砂岩ブロックがそれぞれ修理され再構築に使用されました。

また、北池護岸の部分的な修復工事においては、199材の護岸ブロックが解体されました。そのうちで再使用に耐えうるものは11材のみで、欠損している部材も含め320材の新材ラテライトブロックを使用して再構築がなされました。 塔背面に存在する沐浴池の影響、改変がなされているテラス部との関係など課題の多い保存修復工事でした。

プラサート・スープラ周辺の配置図


Photo.1 N1塔基壇・基礎の発掘調査

修復技術の特色

今回の工事の特徴がいくつか挙げられます。まず、これまでアンコールではあまり事例のない、ラテライト造塔状構築物の解体を伴う保存修復工事であったこと。1950から1960年代に、EFEOによるN3塔(JSAによる呼称)解体修理工事が実施されていますが、その他ではあまり事例がありません。 そのため、ラテライトブロック自体の組積方法の研究、部材修復方法やその材料など研究開発が必要でした。

また、基礎・基壇部の詳細発掘調査を実施し、塔の傾斜要因の解析に努めました。その結果、基礎部を含む全解体が実施され、塔の安定化のために開発された消石灰改良土を使用し、オリジナル工法に近似した版築工法によって再構築がなされています。 この基礎部の詳細調査および全解体も、これまでのアンコール地域での保存修復ではほとんど事例のなかったことで、今回の保存修復工事をとおして得られた調査研究結果や経験は、今後のアンコール地域での遺構の保存修復に関する大きな収穫となったものと思われます。


Photo.5 N1塔、西面、修復後(2005/4)

Photo.2
N1塔前室、東面
修復前(2000)

Photo.3
N1塔前室、東面
修復後(2005/4)

Photo.4
N1塔、西面
修復前(2000)
2005年7月 赤澤 泰(株)鴻池組海外事業部建築部建築課
 2005年4月までJSAシェムリアップ事務所長

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