■第1回バイヨンシンポジウム(1996年)

第1回バイヨンシンポジウムの目的は、バイヨン保存修復活動に携わるすべての専門家との情報交換を開始する事でした。具体的にはシンポジウムの定義付けとして、JSAが立案しようとしているバイヨン寺院全体の保存修復プランの策定に向けた概念的フレームワークづくりが確認され、バイヨンの歴史、遺跡修復の基本ポリシー、バイヨン北経蔵での調査活動、維持管理活動などについて報告・議論されました。 

第1回目ではこうした機会をもつことにより、各国チームの研究成果などに関して、情報を交換、共有し、連携体制をとってゆくことの重要性が認識されました。

結論及び今後の課題として、遺構の歴史的背景の把握と情報の発信、交換、共有が問われました。

■第2回バイヨンシンポジウム(1997年)

第2回バイヨンシンポジウムの目的は、バイヨンやその他の遺構の技術的経験、研究などを収集、理解、把握することで、共通の知識、技術として認識する事でした。具体的にはバイヨン寺院保存修復プラン立案にあたり、各分野の専門家に問うアンケートのサマリーの報告のほか、割れた石材の修復方法、遺跡の現状調査手法、解体修理時の再構築に先立つ仮組手法、内部を砂で充填された基壇の修復方法、浮き彫り付きの壁体ブロックの修復方法、修復計画に先立つ環境・地盤状況調査手法など、修復の実作業に結びつくテクニカルなテーマについて報告・議論が行われました。

この第2回目においては、遺構修復の具体的技術的問題に対し活発に議論され、特に材料に関して大きな関心が寄せられました。

結論及び今後の課題として、材料の特性、構造的耐力、崩壊メカニズムなどの把握による技術的問題に対する理解を深める事が問われました。

■第3回バイヨンシンポジウム(1998年)

第3回バイヨンシンポジウムの目的は、更に踏み込んだディスカッションを進めるため、2日間の日程にて開催し、また技術的、哲学的両視点から遺跡保存修復活動を考察する事でした。具体的にはバイヨンの歴史的特徴、建築的評価、奈良宣言について、クメールの伝統と科学、バイヨンとノコールクラウ村、バイヨン5カ年計画提案、アンコール遺跡の塔の構造的挙動、アンコール・ワットの浮き彫りの保存に関する問題解決法・成功と失敗、パリ・ノートルダム寺院とストラスブルグ・カテドラル修復マスタープランの事例などが報告・議論されました。

第3回目ではカンボジアの伝統文化に敬意を払い、一連の保存修復活動に対する倫理感が新たに問われ、これらの活動から、宗教的価値を再認識することが望まれました。技術的問題では、97年度には既往材料の補修方法が議題であったのに対し、今年度は新材の扱いなどに関して議論されました。

結論及び今後の課題として、カンボジアにおける伝統文化、宗教的価値の復活、バイヨンマスタープランを更新させ、建築学的保存計画、マネージメント計画、環境保護の項を含む事が問われました。なお、第37回目以降から、アンコール地域以外の海外事例をも取り扱うようになります。

■第4回バイヨンシンポジウム(1999年)

第4回バイヨンシンポジウムの目的は、バイヨン中央祠堂の構造的危機への科学的対処方法と哲学的な対応を考察することでした。具体的にはバイヨンにおいて進行中の活動報告、バイヨン寺院保存修復プラン・ドラフトの検討、生きた寺院としての再生について、クメール建築の上部構造、とりわけ塔状構造物の修復方法事例、ピサの斜塔の修復事例、などが報告・議論されました。

第4回目ではバイヨンの中央祠堂の危機的傾斜の議題から始まって、その他の遺構の構造分析の手法を標準化するという指針が示されました。さらに、昨年度に引き続き倫理感において、寺院を生きたものとして思慮されるべきであり、また、保存修復活動がカンボジアに寄与されるべき事が再認識されました。

結論及び今後の課題として、カンボジアの歴史と伝統への寄与、遺構の構造分析手法の標準化、生きた寺院として、カンボジアの若き人材の研修体制への寄与が問われました。

■第5回バイヨンシンポジウム(2000年)

第5回バイヨンシンポジウムの目的は、バイヨンバスレリーフと尊顔から美術史的な考察を行い、多岐にわたる研究成果やドキュメンテーションをどう扱うか考察する事でした。バイヨンの顔の意味、浮き彫りの保存方法、バイヨン寺院保存修復プラン関連作業状況、タニ窯跡遺跡の保存方針、ドキュメンテーションにおける国際チーム間協力、ローマ・トラジャンコラムの修復事例、タイ、パキスタン、シリアの修復事例などが報告・議論されました。

第5回目では多様な議題が挙げられました。アンコール遺跡全体でのバスレリーフ保存のガイドラインづくりや、観光客などによるバイヨンへの負荷把握の必要性が問われました。更に今まで蓄積されてきた各国の研究成果を効率良く活用するために、UNESCO/APSARAのドキュメンテーションセンターへの報告書などの提供と、APSARAへのタイムリーな情報を寄せる事が提言されました。

結論及び今後の課題として、急速に変化する観光動向の精査、バスレリーフ保存のためのガイドラインづくり、ドキュメンテーションセンターの活用が問われました。

■第6回バイヨンシンポジウム(2001年)

第6回バイヨンシンポジウムの目的は、東西の巨大重要遺跡に関して、保存修復のみならず、活用も含めた総合的なマネージメントの方法を比較検討する事でした。

第6回目は、特に巨大遺跡全般のマネージメント体制を確立する必要性から、コロッセオ、ボロブドゥール、奈良平城京など、東西の先進事例に関して発表報告がされ、アンコールでも活かされるよう提言されました。また、バイヨン及びアンコール・トム全般の水利機能の研究更新が望まれました。

結論及び今後の課題として、バイヨンマスタープランの調査項目では建築学的、美術史学的、考古学的調査、保存に関する項目では、保存修復計画、保存活動、修復活動、その他にメンテナンス計画を中心に更新させ、また、アンコール全域での遺構全般のマネージメント体制を確立させていくことが問われました。

■第7回バイヨンシンポジウム(2002年)

第7回バイヨンシンポジウムの目的は、バイヨンマスタープランのまとめへ向けた最終ディスカッションを進めると同時に、バイヨン及びアンコール地域の水利調査研究に関する研究、世界(ヨーロッパ、非ヨーロッパなど)の石造修復技術の比較を行うことでした。

第7回目では遺跡修復に関する技術的情報の共有だけではなく、アンコール地域に住む住民やその民族性、居住実態なども考慮すべきこと、そしてアンコール周域の地理情報、水利情報などあらゆることを考察しながらアンコールの将来像を考えていくことが提言されました。

結論及び今後の課題として、地域情報を統合していくこと、そしてアンコール地域とさらに広範な地域を総合的に考察しつつ、バイヨンマスタープランの最終仕上がりを考慮していくことが問われました。

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