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■「バイヨン寺院中央塔の恒久的保存方法の研究」の経過報告

現在、日本国政府アンコール遺跡救済チーム(以下JASA)では,第三フェーズの主要な課題の一つである「バイヨン寺院中央塔の恒久的保存方法の研究」を進めている。これまでに,中央塔室内外の三次元計測を完了し,精確な形状データを確保し,こうした形状データを利用した構造解析に取り組んでいる他,塔の挙動・振動観測や気象観測を進めている。また,塔基礎の変状が崩壊に与える影響を考慮して,塔直下・上部テラス内の基礎構造の調査を2007年には実施した。これまでに電気探査・地中レーダ探査・電磁波探査を実施し,その適用性が検証されたが,今後は,こうした非破壊調査に加えて中央塔直下において,一部解体・発掘を伴う目視調査が望まれている。

2008年8月,JASAは過去にフランス極東学院(以下EFEO)が実施した中央塔内における発掘調査とその埋め戻しの状況を確認するための発掘調査を行った。この調査は,2008年12月からの本格的な調査開始を計画している,バイヨン中央塔直下の基礎構造調査の事前調査として行ったものである。

EFEOによる調査は1933年に当時の保存官トルーヴェの指揮の下で実施された。この調査では,中央塔の床面より14mの深さまで掘り下げられ,さらに発掘穴の底から1mのボーリング調査が実施された。この調査によりバイヨン寺院の本尊であったと考えられる仏陀坐像が発見された他,石製の彫像片が複数発見されたが,既に中央孔は盗掘済みであったことが報告された。また,深さ12.5mにおいて北面を除く3方向に対して水平にトンネルが穿たれ,直径約1.2mの発掘穴の壁面から1.75mあるいは2mの地点で石造壁らしき構造体が確認されたことが報告されている。この調査は雨季に実施されたため,地下水が沸き出し,地山まで発掘穴が到達することなく中断された。調査の後,床面から2mの深さまで埋め戻しが行われ,再調査の機会がうかがわれていたが,前出の保存官死去のため調査は断念され,続く保存官であるマーシャルによって後年,床面までの埋め戻しが行われた。今回のJASAによる調査では,マーシャルとトルーヴェのそれぞれによる埋め戻しの状況を確認し,また発掘調査時に記録されている断面スケッチの整合性を照査することを目的とした。  

発掘調査の結果,過去の報告と同様に床面から2.25mの深さにて埋め戻しの土砂が変わっていることが確認された。上方は玉石混じり中砂,下層はレキがみられない中砂であった。発掘孔の底からさらに6mのオーガー試験を行ったが,下層の砂はN値2弱の強度が続き,極めて構造的には緩いものである。主室の壁体直下はラテライト層が1あるいは場所によって2層確認されるのみで,その下は玉石を混入する中砂による版築が続いている。今回の調査結果からすれば,中央塔上部の荷重は基礎地盤をなす版築層に直接伝わっているように看取された。今回の調査を踏まえ,今年12月以降に計画している本格的な調査の基本的な方針を策定する予定である。



調査前の安全祈願式の様子


発掘調査風景
 

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