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東京大学 生産技術研究所 池内研究室の調査活動

東京大学 生産技術研究所 池内研究室では、科学技術振興機構(JST)の支援の下で、大規模な文化遺産のデジタルアーカイブ化プロジェクトを進めています。このプロジェクトでは、アーカイブ化のための基礎技術の研究・開発から、実際に貴重な文化遺産のデジタル保存に取り組んでいます。その一環として日本国政府アンコール遺跡救済チームの協力の下でバイヨン寺院の調査ミッションを行ってきました。2004年12月で第3回目です。

 

活動内容・調査方法

私たちがバイヨン寺院で進めている活動内容として、次の3つのトピックがあります。
・バイヨン寺院全体の三次元幾何モデルの取得
・塔に施された尊顔の計測を行い、ライブラリの構築
・回廊に刻まれたレリーフ(浮彫り彫刻)のデジタル保存

51基の塔と、2重の回廊、及び3重のテラスから成り立っている巨大なバイヨン寺院全体のモデルを作成することは、手法の研究として大きなチャレンジになります。また、全部で173面あるとされる尊顔を、出来る限り全てに対して三次元計測を行い、尊顔のデジタルライブラリを構築したいと考えています。そして、繊細な形状を計測対象にした取り組みとして、回廊に刻まれたレリーフの形状情報と色情報の保存を行っています。

三次元幾何モデルの作成は、「計測作業」、「位置合わせ処理」、「統合処理」の3つから成り立っています。バイヨン寺院での計測では、塔や尊顔などにはCyrax 2500やZ+F Imager 5003などの長距離用のレンジセンサを用い、またレリーフには近距離用のKonica Minolta Vivid 910を使用しています。これらのセンサから得られる形状情報は、対象表面の部分データであるため、幾つもの計測結果を繋ぎ合わせる必要があります。そのために、まず部分データ同士の位置合を合わせます。これが「位置合わせ」と呼ばれる処理で、大規模な対象を扱えられるように独自のソフトウェアを開発しています。そして、位置が合わせられ重なり合ったデータを、統一した面に変換します。これが「統合」と呼ばれる処理で、こちらに関しても大規模データを扱える独自のシステムを構築しています。

また、バイヨン寺院の様に巨大な遺跡を計測する際には、地上に設置して使用する従来のセンサでは測ることが出来ない部分が生じます。特に、塔や回廊の屋根の上などを計ることは大変困難になります。そこで、私たちの研究室では、気球にセンサを吊り下げて、空中から計測を行うFLRS(Flying Laser Range Sensor)の開発を進めています。12月のミッションでは、このセンサを用いて4日間にわたりバイヨン寺院での計測を行いました。

 


Cyraxによる計測


尊顔の計測風景


レリーフの計測風景


気球実験の準備風景

 


気球からの計測風景

第2回目までの計測結果

 

また塔に施された尊顔の計測に関して、第2回までのミッションでは代表的な尊顔を選んで進めてきました。その結果として、次のような尊顔のモデルが得られています。第3回のミッションは、尊顔の計測に重点をおいて進め、ほぼ全て尊顔の計測を完了しました。現在は、そのデータ処理を行っており、その後ライブラリ化を進める事を予定しています。

代表的な尊顔のモデル化の例

 

第1回目のレリーフ計測では、北壁内回廊を対象としました。また、第2回目では南壁外回廊を計測してモデル化を行っています。第3回目のミッションでは、テラスにある第1夫人、第2夫人と南壁内回廊の一部の計測を行いました。現在は、同時に撮影したテクスチャ画像の処理を進めています。今後は東壁外回廊やペディメントレリーフの計測を予定しています。

 

バイヨン寺院計測へのチャレンジと成果の活用

バイヨン寺院のように巨大で迫力がありながら、一方で細部まで細かい彫刻が施されている繊細さを持ち合わせている遺跡は、計測対象として、研究対象として魅力的であり大きなチャレンジになっています。計測するのにこれだけの苦労が伴うことを考えると、建造するのにどれだけの労力が掛かったのか想像ができません。今後もこの遺跡の魅力的な面をいかに正確にデジタル保存し、そして広く有効利用されるかを考えたいと思います。

 

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