JSA / JASA

Japanese Government Team for Safeguarding Angkor
JAPAN-APSARA Safeguarding Angkor

日本国政府アンコール遺跡救済チーム

バイヨンシンポジウム

「バイヨンシンポジウム」は、「バイヨン寺院全域の保存修復のためのマスタープラン」の策定へ向けたフレームワークについて議論するために、1996年に、JSAが主催、ユネスコが事務局を務める形で始められました。以後、アンコール遺跡の町シェムリアップにて年に1度の開催を続けています。バイヨンの保存修復のための技術的諸問題は、アンコール遺跡全体に関わりを持っているため、アンコール遺跡の保存修復に関わるすべての外国チームの参加を得て議論を重ねてきました。またこのシンポジウムは、世界の関連する先例に学び、アンコール遺跡の保存問題を世界的な視野から考えることを意図しています。具体的には、他の重要な遺跡の保存修復に関して注目すべき成果をあげ、貴重な経験を持つ、国際的専門家の積極的参加があったことです。

2019年12月9日

2019年12月9日に、バイヨンシンポジウムを開催しました。発表した内容は以下の通りです。

2018年12月6日

2018年12月6日に、UNESCO/JSAプロジェクトオフィスにてバイヨンシンポジウムを開催しました。内容は以下の通りです。

2015年12月4日

2015年12月4日にICC事務局およびアプサラ機構との協力の下、アプサラ機構オフィスにてバイヨンシンポジウムを開催しました。内容は以下の通りです。

2014年12月2日

2014年12月2日に、バイヨンインフォメーションセンターにてバイヨンシンポジウムを開催しました。内容は以下の通りです。

第9回(2004年12月13〜14日)

UNESCO/JASAプロジェクトオフィスにて、第9回バイヨンシンポジウムが開催されました。

第9回バイヨンシンポジウムの目的は、バイヨンマスタープランの骨格となるバイヨン南経蔵の修復計画、そして内回廊・外回廊の浅浮き彫りの修復保存と中央塔の構造的安定化についての具体的指針を示すことと、バイヨン憲章の条文案の提示することでした。バイヨンマスタープランの最終完成へ向けての総合的なディスカッションも行われました。

シンポジウムの結論及び今後の課題として長期的視点にたったバイヨンの保存のために、地盤・地質工学や排水網に関する、モニタリングシステムの確立、緊急度の高い中央塔の安全性の確保等の諸問題に取り組み、寺院全体の構造的安定性を保つことの必要性が提言されました。更にバイヨン南経蔵や浅浮き彫り彫刻も調査研究、保存修復の緊急性について同意を得ました。またバイヨン憲章の位置づけも明確化されました。観光客への安全対策もアプサラ機構と共同で取り組むこと、そして多岐にわたる海外事例を参考にして、アンコールでの保存修復活動に応用できる技術を広く検討し続けることの重要性が再確認されました。

セッションI(12月13日午後2時より)
「バイヨン寺院全域の保存修復への展望、バイヨンマスタープランとバイヨン憲章」
(JSA中川武団長 他)

セッションII(12月14日午前9時30分より)
「アンコールに関わる研究と保存活動報告」
(アプサラ機構副総裁ロス・ボラット氏、東京文化財研究所、シドニー大学他)

セッションIII(12月14日午後2時より)
「インターナショナル・ケース・スタディ」
(前ICOMOS会長ローランド・シルバ氏他)

第8回(2004年2月6〜7日)

2004年度シンポジウムの主題は2つありました。

1つ目の主題は、アンコールの水問題に関するものです。JSAはアンコール遺跡の保存修復問題を長期的視点から考えるために、時に水環境の把握を重視してきました。そのために、アンコール地域の10箇所の地において、岩盤まで達するボーリング調査・井戸水の増減調査、さらにバイヨン寺院とアンコール・トムの水の出入調査など、基礎データの収集につとめてきました。その成果を報告するとともに、関係各位に呼びかけ、問題の所在を理解し、今後の協力の方向を探ることを目的としました。アンコール遺跡の保存とアンコール地域の持続的発展と調和させていくためには、広範は調査研究と長期的視点に立った各関係方面からの協力が何よりも重要であると考えています。アンコール地域にて働く専門家を初めとし、JICAやカンボジア国内の各行政機関、ホテル、観光関係者等の参加を得て、有意義に展開することができました。
2つ目の主題は、「バイヨン寺院全域の保存修復のためのマスタープラン」(以下「バイヨンマスタープラン」)に関わる問題です。バイヨンシンポジウムは当初から、「バイヨンマスタープラン」の枠組みを協議することが目的でした。アンコールに関与する全ての専門家に呼びかけ、さらにこの分野の国際的先駆者の参加を得て、これまで、積み重ねてきた成果をJSAが中心となって整理してきました。今年度はJSAが中心となり進めている「バイヨンマスタープラン」と「バイヨン憲章」に関する基本的な考え方と骨格について発表し、今後の具体的ステップに向けた方向を確認することができました。

第7回(2002年)

第7回バイヨンシンポジウムの目的は、バイヨンマスタープランのまとめへ向けた最終ディスカッションを進めると同時に、バイヨン及びアンコール地域の水利調査研究に関する研究、世界(ヨーロッパ、非ヨーロッパなど)の石造修復技術の比較を行うことでした。
遺跡修復に関する技術的情報の共有だけではなく、アンコール地域に住む住民やその民族性、居住実態なども考慮すべきこと、そしてアンコール周域の地理情報、水利情報などあらゆることを考察しながらアンコールの将来像を考えていくことが提言されました。
結論及び今後の課題として、地域情報を統合していくこと、そしてアンコール地域とさらに広範な地域を総合的に考察しつつ、バイヨンマスタープランの最終仕上がりを考慮していくことが問われました。

第6回(2001年)

第6回バイヨンシンポジウムの目的は、東西の巨大重要遺跡に関して、保存修復のみならず、活用も含めた総合的なマネージメントの方法を比較検討する事でした。
特に巨大遺跡全般のマネージメント体制を確立する必要性から、コロッセオ、ボロブドゥール、奈良平城京など、東西の先進事例に関して発表報告がされ、アンコールでも活かされるよう提言されました。また、バイヨン及びアンコール・トム全般の水利機能の研究更新が望まれました。
結論及び今後の課題として、バイヨンマスタープランの調査項目では建築学的、美術史学的、考古学的調査、保存に関する項目では、保存修復計画、保存活動、修復活動、その他にメンテナンス計画を中心に更新させ、また、アンコール全域での遺構全般のマネージメント体制を確立させていくことが問われました。

第5回(2000年)

第5回バイヨンシンポジウムの目的は、バイヨン浅浮き彫りと尊顔から美術史的な考察を行い、多岐にわたる研究成果やドキュメンテーションをどう扱うか考察する事でした。バイヨンの顔の意味、浅浮き彫りの保存方法、バイヨン寺院保存修復プラン関連作業状況、タニ窯跡遺跡の保存方針、ドキュメンテーションにおける国際チーム間協力、ローマ・トラジャンコラムの修復事例、タイ、パキスタン、シリアの修復事例などが報告・議論されました。
多様な議題が挙げられ、アンコール遺跡全体での浅浮き彫り保存のガイドラインづくりや、観光客などによるバイヨンへの負荷把握の必要性が問われました。更に今まで蓄積されてきた各国の研究成果を効率良く活用するために、ユネスコ・アプサラ機構のドキュメンテーションセンターへの報告書などの提供と、APSARAへのタイムリーな情報を寄せる事が提言されました。
結論及び今後の課題として、急速に変化する観光動向の精査、浅浮き彫り保存のためのガイドラインづくり、ドキュメンテーションセンターの活用が問われました。

第4回(1999年)

第4回バイヨンシンポジウムの目的は、バイヨン中央塔の構造的危機への科学的対処方法と哲学的な対応を考察することでした。具体的にはバイヨンにおいて進行中の活動報告、バイヨン寺院保存修復マスタープラン・ドラフトの検討、生きた寺院としての再生について、クメール建築の上部構造、とりわけ塔状構造物の修復方法事例、ピサの斜塔の修復事例、などが報告・議論されました。
バイヨンの中央祠堂の危機的傾斜の議題から始まって、その他の遺構の構造分析の手法を標準化するという指針が示されました。さらに、昨年度に引き続き倫理感において、寺院を生きたものとして思慮するべきであり、また、保存修復活動によってカンボジアに寄与するべき事が再認識されました。
結論及び今後の課題として、カンボジアの歴史と伝統への寄与、遺構の構造分析手法の標準化、生きた寺院として、カンボジアの若き人材の研修体制への寄与が問われました。

第3回(1998年)

第3回バイヨンシンポジウムの目的は、更に踏み込んだディスカッションを進めるため、2日間の日程にて開催し、また技術的、哲学的両視点から遺跡保存修復活動を考察する事でした。具体的にはバイヨンの歴史的特徴、建築的評価、奈良宣言について、クメールの伝統と科学、バイヨンとアンコール・クラウ村、バイヨン5カ年計画提案、アンコール遺跡の塔の構造的挙動、アンコール・ワットの浅浮き彫りの保存に関する問題解決法・成功と失敗、パリ・ノートルダム寺院とストラスブルグ・カテドラル修復マスタープランの事例などが報告・議論されました。
カンボジアの伝統文化に敬意を払い、一連の保存修復活動に対する倫理感が新たに問われ、これらの活動から、宗教的価値を再認識することが望まれました。技術的問題では、1997年度には既往材料の補修方法が議題であったのに対し、今年度は新材の扱いなどに関して議論されました。
結論及び今後の課題として、カンボジアにおける伝統文化、宗教的価値の復活、バイヨンマスタープランを更新させ、建築学的保存計画、マネージメント計画、環境保護の項を含む事が問われました。なお、第3回目以降から、アンコール地域以外の海外事例をも取り扱うようになりました。

第2回(1997年)

第2回バイヨンシンポジウムの目的は、バイヨンやその他の遺構の技術的経験、研究などを収集、理解、把握することで、共通の知識、技術として認識する事でした。具体的にはバイヨン寺院保存修復マスタープランの立案にあたり、各分野の専門家に問うアンケートのサマリーの報告のほか、割れた石材の修復方法、遺跡の現状調査手法、解体修理時の再構築に先立つ仮組手法、内部を砂で充填された基壇の修復方法、浮き彫り付きの壁体ブロックの修復方法、修復計画に先立つ環境・地盤状況調査手法など、修復の実作業に結びつくテクニカルなテーマについて報告・議論が行われました。
特に、遺構修復の具体的技術的問題に対し活発に議論され、特に材料に関して大きな関心が寄せられました。
結論及び今後の課題として、材料の特性、構造的耐力、崩壊メカニズムなどの把握による技術的問題に対する理解を深める事が問われました。

第1回(1996年)

第1回バイヨンシンポジウムの目的は、バイヨン保存修復活動に携わるすべての専門家との情報交換を開始する事でした。具体的にはシンポジウムの定義付けとして、JSAが立案しようとしているバイヨン全体の保存修復マスタープランの策定に向けた概念的フレームワークづくりが確認され、バイヨンの歴史、遺跡修復の基本ポリシー、バイヨン北経蔵での調査活動、維持管理活動などについて報告・議論されました。
こうした機会をもつことにより、各国チームの研究成果などに関して、情報を交換、共有し、連携体制をとってゆくことの重要性が認識されました。
結論及び今後の課題として、遺構の歴史的背景の把握と情報の発信、交換、共有が問われました。